「・・・っ、あ・・・」
身体の中で熱が疼いている。 あまりのもどかしさに、弘樹はベッドで呻いていた。
野分がバイトに行った後、そのまま残された俺は、今一人悶え苦しんでいる。 縛られて動きを制限されている上に目隠しの状態で、弘樹はさらに凌辱ともいえる仕打ちを受けていた。
野分を受け入れ過ぎて緩くなっていた後孔に、真っ赤なキャンドルが押し込まれているのだ。 そこはいまだ野分の欲望で濡れている。 肌は綺麗にしていってくれたのだが、その部分を処理することはなかった。
今日はクリスマスですからね。 そう言って、濡れた音を立てながら弘樹の中に押し込んだのだ。
「・・・っ、は・・・」
眉間に皺を寄せ、身体の疼きに耐えている。 蝋燭の滑らかな表面と螺旋の形状は、弘樹の内側を刺激し、気が狂ってしまうくらいの快感を与えていた。 しかも野分は、自分のいない間に勝手に射精しないようにと、性器の根元にに金色のリボンを結んで行ったのだった。
「・・・くぅ・・・っ」
内壁の疼きも勃起した性器も、これ以上ないくらい耐えがたいことになっている。 特に性器は大きくなればなるほどリボンが喰い込んで、快楽と痛みの間で弘樹を彷徨わせていた。
しかも責められているのは下半身だけではなかった。 先ほどの行為の最中、乳首をさんざん苛められ――――― まずは唇で、次に指で、歯で、舌で、身体の使える部分すべてを使って嬲り、乳首だけで射精させられると、満足したかのように性器をリボンで縛り上げたのだ。 そして今、弘樹の硬く勃ちあがった乳首は、電飾コードで強調するように結ばれている。 挟むように結ばれたそこはコードにあたっても辛いし、シャツが触れても弘樹に官能をもたらしていた。
「・・・っ、あ・・・ッ、あぁ・・・あ」
中途半端な攻め苦に耐えかねた弘樹が、後ろ手に縛られた掌をきつく握りしめる。 後孔に挿さったモノの為、あまり大きく動くことも出来ない。 なにより視界が奪われていることが、弘樹の不安を助長させていた。 黒いシーツの上に横たわる弘樹の、白い足が浮き上がって見える。 その足の太腿は、透明な液で濡れていた。 淫らな姿だった。 しかし今の弘樹にはそんな自分の姿が見えるはずもない。
「・・・っ、もう・・・あ、や・・・」
今すぐ思いっきり性器をどこかにこすりつけたい。 後孔にあるものを取り去ってしまいたい。
「のわ・・・き・・・ 早く、帰ってきてくれ・・・ッ」
そんな弘樹の姿をじっと見つめている姿があった。 野分はバイトに行くふりをして、先ほどからずっと弘樹の姿を見ていたのだった。
(ヒロさん、かわいいなぁ)
そんな事を思いながら、ゆったりと椅子に腰掛け脚を組み肘掛に頬杖をついて、ベッドの上の恋人を眺めていた。 いったいどれくらいの間、悶え苦しませれば気が済むのか、野分は楽しそうに弘樹の痴態を眺めている。 弘樹を放置したまま4時間ほど経ったころ、野分は徐に椅子から立ち上がった。
「ヒロさん、ただいまです。いい子にしていましたか?」 「のわっ・・・」
弘樹は声を上擦らせた。 一刻も早くこの果てしない愉悦という苦痛の檻から解き放って欲しかったのだ。 野分は弘樹の乱れたシャツの裾に手を這わせ、下腹につくほど勃起した性器を握りこんだ。
「ああ、ここをこんなに反り返らせて、はしたない人ですね」 「・・・ひ・・・ぁ・・・っ」 「ほら、また・・・溢れてくる」 「ちが・・・っ」
弘樹は頭を横に振った。 自分の浅ましい欲望を、認めたくなかったからだ。
「ふふ、素直じゃないヒロさんはとっても魅力的なんですけど、俺のものとして従順になるように躾けているのに、その成果が表れないなんて悲しいです」
野分は涙で濡れた目隠しを取ると、弘樹の瞳を覗きこんだ。
「そ、そんな・・・ あぅ・・・っ」
野分の指先が性器の先端を撫でまわす。 そしてそこを広げるように、指の腹で捏ねながら強く押した。
「・・・ううっ」
透明な雫がますますにじんでくる。
「ほら、こんなに感じてる」 「・・・感じてなんか、ない」
弘樹は涙目で野分を睨みつける。
「こんなことするお前なんて嫌いだ!」 「ああ、この口は意地っ張りですね」
野分は囁くように弘樹の唇を撫でる。 弘樹が悔し紛れにその指に噛みついたが、野分の表情は一つも変わらなかった。
「・・・可愛いヒロさん。あなたは下の口の方が素直です」 「あ・・・っ」
膝を立てられ脚を大きく割られる。 弘樹は表情をこわばらせた。 指に噛みついたのなんて、ささやかな抵抗にすぎなかったのだ。
「いつまでも抵抗するヒロさんも好きなんですけど・・・さすがにちょっと傷つきます」 「おまえは・・・本当に勝手な奴だな・・・っ」 「そういうヒロさんは、今の自分の状況がわかってないようですね」
弘樹に噛みつかれた指先をぺろっと舐めながら、野分は呟く。
「俺が教えてあげます」 「・・・っ」
野分は強引に抱きすくめると、無理やり唇を奪った。 罰のように、きつく。 でも、本当の罰は、その後に待っていた。
野分は着ていたシャツ、後孔に差し込まれていたキャンドル、身体を拘束していた電飾コードを乱暴に外すと、弘樹を全裸にした。 そして右手と右足、左手と左足をそれぞれ繋ぎ、仰向けにさせる。 猿轡も噛ませて動きだけでなく言葉さえも奪ってしまう。 これで弘樹は自由に意見を述べることが出来なくなってしまった。
「ヒロさん、俺のものになりなさい。一生、あなたが死ぬまでかわいがってあげますから」
野分は乳首に軽く歯を立てながら囁いた。 と同時に後孔に指を二本入れ、内壁を擦る。 すると、びくんと弘樹の全身が震えた。
「んっ」
二本の指で内部の感じるあたりを撫でながら乳首を舐めると、弘樹は全身を紅潮させて悶えた。
「んっ、んっ、んーっ」
前立腺と乳首を弄りながら性器を扱くと、弘樹は腰を震わせあっけなく一度目を放った。 休む間もなく全身を愛撫すると、涙を流しながら背中をのけ反らせ、すぐに勃起する。 後ろのに入れた指は、いつの間にか三本になっていた。
(そろそろいいかな)
野分は弘樹に見せつけるようにして、下半身をさらす。 激しく勃起した野分の性器は、弘樹への執着心を表しているようだった。 三本の指を引き抜き、入口が閉じないうちに性器をあてがった。 ぐっと先端を押し付け、じわじわと壁を広げながら侵入する。
「ん、ん、ん、ううっ」
弘樹はぽろぽろと涙を零していた。 それは痛みによるものなのか、快感からくるものなのか。 野分は頬から目尻にかけて、何度も優しく舐めとった。 そしておもむろに動きはじめた。
あたたかい粘膜に包まれて、野分は自分の想いが溶け出していくようだと思った。 組み敷いている弘樹は、今、野分だけものになっている。 たとえそれが無理やりだったとしても、征服したいという思いは遂げられた。
野分は弘樹の身体の奥に、思いっきり大量の粘液をぶちまけた。
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